ヨコハマトリエンナーレ開幕。インドネシアのジョコ・ヴィアンの巨大オブジェが楽しい。

サンシャワー展が絶賛開催している中、横浜ではトリエンナーレが始まった。こちらにも東南アジアのアーティストが何人か参加している。

メイン会場の横浜美術館の入り口前には、サンシャワーにも作品が出ているシュシ・スレイマン(マレーシア)の作品が、アイウェイウェイの派手な作品の隣にさりげなく静かに並んでいる。さりげなさすぎて、写真を撮るのを忘れてしまった。

館内に入ると、出ました!という感じで、ジョコ・ヴィアント(インドネシア)の巨大な作品。竹でできた大注連縄のようなもので、この竹はインドネシアから持ち込んで作ったらしい。日本の竹だと、うまくこういうふうにはできないそうだ。私は、これを見て花沢健吾の『アイアムアヒーロー』の最後の方に出てくるとゾンビ合体巨大生物(?)を思い出してしまったが、でもこちらは動きません。

マレーシアのアン・サマットは、ボルネオの少数民族の伝統衣装を思わせる作品で参加。よく見ると、ガラクタの寄せ集め。すごくよくできている。

すごいと思ったのはベトナムのザ・プロペラ・グループの作品。物体として展示されていたのは下の透明な直方体なのだけれど、これは実は横から銃弾を撃ち込んでいて、この銃弾が突き抜けていく様子を超スローモーションで撮影した映像が流されている。これを見ると、銃弾が貫くことでこの直方体が信じられないくらい極端に変形していくのだ。びっくりした。この他に、トゥアン・アンドリュー・グエンの映像作品も。サンシャワー展でもそうだけれど、ベトナムの作家たちは、難民体験、ベトナム国外での生活、ベトナムに戻って(というよりは移動したという意識の人もいるだろう)の仕事という体験を持つアーティストが注目されやすいということもあるのか、テーマはもちろん、表現方法にもどこか共通のものを感じる。東南アジアの中でもかなり尖ったアーティストがどんどん出てきている気がする。

今年のヨコトリでは、東南アジア勢は他にもいたのかしら。みつけられなかったです。

 

以下は、ヨコトリで見つけたお気に入りの作品たちです。

 

 

 

Jakarta Postで紹介されていた、インドネシアの知る人ぞ知るミュージアム。

確かに初めて聞くミュージアムばかり。かろうじて、行ったことがあるのは5番目のバリのだけでした。以下、各ミュージアムのHPへのリンクもつけておきます。

 

1. Ullen Sentalu Museum (Yogyakarta, Kaliurang)

https://ullensentalu.com/konten/1/0/beranda

2. House of Sampoerna (Surabaya)

http://houseofsampoerna.museum/

3.House of Danar Hadi(Surakarta)

http://danarhadibatik.com/site/whydanarhadi?page=museum

4.Tjong A Fie's Mansion(Medan)

http://tjongafiemansion.org/#intro

5.Agung Rai Museum of Art "ARMA" (Bali, Ubud)

http://www.armabali.com/museum/

インドネシア-沖縄  連帯するポスター展

こういう展覧会もあることを友人から教えてもらいました。そういえば、サンシャワー展でも、マレーシアのサバのグループの版画によるプロテストアート作品(そういう言葉があるのかしら)が展示されていた。

インドネシア-沖縄 連帯するポスター展 - IRREGULAR RHYTHM ASYLUM

 

サンシャワー展@国立新美術館 撮り巡り。

前にも書いたように、この展覧会は基本的に写真撮影がOKなので、一眼レフを持って会場を回りました。ただ、新美術館だけでタイムアップ。森美術館は今度行ってみます。

以下、私的作品カタログです。

日本とフィリピンを舞台にしたメスティソたちの物語   乙川優三郎著 『R.S. ヴィラセニョール』 新潮社

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主人公は、フィリピンから日本に移り住んできた男リオと日本人女性である君枝を父母に持ち、染色の道を歩んでいる女性レイ(鈴)。彼女が名刺に書いている長い名前だとレイ・市東・ヴィラセニョール。

この小説は、千葉県の御宿海岸にスタジオを持ち、染色(型をデザインし、布を染める仕事)といういかにも日本的な世界の中で葛藤するレイを描くところから始まる。彼女を親身になって助けるのが近くに住んでいる草木染め職人のロベルト(彼はメキシコと日本とのメスティソ)。レイとロベルトが努力して傑作を生み出す過程が一つの見所。この二人の関係が軽くて、自然で、でも真面目で、とても素敵。御宿の街がとても魅力的に描かれていて、行ってみたくなる。

後半になると、フィリピンでの父とその一族の秘密をレイが知ることになり、ストーリーが急転する。ここでのフィリピンの描き方がかなり激しくて、「本当ですか!」と言いたくなるが、そこがこの小説のクライマックスだろう。

いくつか、素敵な言葉を小説から引用。

四季折々の眺めや、物の哀れや、散り花の風趣を味わう非凡さを例に挙げて、過剰に日本を特化し、美化する傾向が長く列島に普遍している。細やかな季節感に溢れた日本の風土に原色の多色使いは映えないと先人に教えられ、人々は信じてきたが、鮮やかな紅葉を愉しみ、紺絣に赤い襷掛けで働いてきたのも日本人である。どう見ても渋いとは言えない長襦袢の柄と色遣い、歌舞伎や錦絵、唐傘や千代紙、江戸紫や黄八丈なども日本が生んだものである。現職の映えない国ではないとレイは思うが、渋い色を信じてやまない人たちにリベラルな考え方は通じない。色を見る目がない、と笑われるのが落ちである。

こう反発したレイは、鮮やかな色彩の作品にチャレンジするのだが、ここでロベルトがレイに紹介するのがメキシコのコチニール。たまたま、この小説を読んでいるときに行った益子の工房で、コチニールで染織した布を見たのがこれ。サボテンに寄生する小さな虫から採れる色素が原料というのだから希少なものなのだろう。きれいでした。

日本を飛び立ってまもなく機内サービスの夕食を終えた乗客たちは眠るか、スマートフォンを見るか、酒を飲むかしていた。エコノミークラスを埋めているのは二、三十代の若い男たちで、カジュアルな服装のせいか商用の渡航には見えない。英語留学という年齢でもないだろう。一様に微笑を浮かべ、そこそこ行儀よく、声は小さく、贅沢な旅行のはじまりに自足している。そこが不気味でもあった。人との深い関わりや尊い目的のための労苦を面倒がって、本当の友人や恋人を作らない。自身のうちにすべてがあると信じて、他者に無用のレッテルを貼り続ける。立ち向かえば手に入る大きな可能性や美しい世界を夢見ない。たぶんそんな人種であろう。無理に時分を追い立てずとも、出すものを出せばジェット機がたちまち別世界へ運んでくれる。

こういう辛辣な日本、日本人批判も、小説のあちらこちらにちりばめられているのも、この小説の面白いところ。

 

 

 

 

 

六本木で開催中 「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」関連リンク

7月頭から始まったサンシャワー展。六本木の二大美術館で同時で開催ということで、この三連休も熱暑の中、ほんとにサンシャワーが降って欲しいと思いながら両館を行き来する人がたくさんいることでしょう。

ぽちぽち目についたレビュー系の記事を載せておきます。

会場では基本的に写真撮影自由なので、 インスタでも映像がたくさんあがってます。

ジョージタウン・フェスティバルは今月末から。アジアの国際共同制作作品が続々。

ペナン島ジョージタウンを主な舞台として展開される芸術祭、ジョージタウン・フェスティバル。舞台芸術を中心に映画、美術、音楽と、100以上のイベントが楽しめる。今年で18回を迎え、東南アジアでも老舗のフェスティバル。

ラインナップを見ると、今年は、様々な国際共同制作作品が並んでいる。例えば。。。

  • マレーシアのAdibah Noor(タレンタイムの怖い女教師役で日本でも知られるようになりました)が歌手となり、ペナン交響楽団やフィリピン、インドネシア、タイのミュージシャンからなるASEAN混成チームによる音楽作品、Svara Asean
  • マレーシア、シンガポールインドネシア、フィリピンの演劇家、ダンサー、美術家によるIkat(絆)という舞台作品。
  • 能の梅若猶彦とコレオグラファーのAida Redzaが作り上げた新作”The Italian Restauran”。(いったいどんな作品なのだろう???)

まだまだ他にもあるし、もちろん、共同制作の他にも世界各国から招かれた作品も。

ジョージタウンは昔、私が初めて宿泊した懐かしい街。その後も何度も出かけたけれど中国、ヨーロッパ、インドなど様々な要素が楽しめる素敵な雰囲気のあるところで、何しろ、食べ物がおいしい。古びたショップハウスの前に並ぶ屋台で食べたお粥は、今でも、私のベストアジアめしの一つ。そこで繰り広げられるアートのフェスティバルは最高でしょう。

 

www.star2.com

 

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